
角田 高彬
2025年12月16日に開催された Datadog Live Tokyo において「AI Agentで実現する AIOps – Bits AI SRE 国内活用事例 – 」と題した Fireside Chat セッションが行われました。
本セッションでは、株式会社 ヌーラボの Lead SRE 二橋宣友 様と Datadog Japan の Senior Sales Engineer 角田高彬 が登壇し、 Datadog が提供する AI エージェント「Bits AI SRE」の国内企業における導入事例について、対談形式で紹介されました。
本ブログでは、当日の対談内容を基に「Bits AI SRE」の機能概要・活用事例・導入効果を整理してご紹介します。

Bits AI SRE とは:24/365 オンコール AI エンジニア
セッション冒頭では、Datadog の角田より「Bits AI SRE」の概要が紹介されました。

「Bits AI SRE」は、Datadog に集約されたメトリックスやログ、トレース、アラートなどの監視データ、対応手順(Runbook)、過去のインシデント対応履歴を基に、 自律的に調査を行う AIOps ソリューションです。 24 時間 365 日稼働するオンコール AI エージェントとして、システムのアラート対応を支援します。
アラートが発生するとAI エージェントが自動的に調査を開始し、複数の原因仮説を立てて検証を行い、その根拠とともに結果を共有します。
担当者は日本語対応のチャットを通じて調査結果を確認したり必要に応じて追加情報を与えたりするだけで、原因調査から対応策の検討までを AI エージェントと協調しながら進めることが可能となります。

国内金融業界での導入事例
「Bits AI SRE」の具体的な事例の一つとして、国内の銀行業における活用事例が紹介されました。
過去に発生し調査に数時間を要したインシデントについて、同一のアラートを「Bits AI SRE」で改めて調査したところ、約5分で同じ結論に到達できたことが共有されました。

株式会社 ヌーラボ様におけるBits AI SRE 検証背景
続いてヌーラボ 二橋様から、ヌーラボの SRE チームが直面している課題と「Bits AI SRE」を検証するに至った背景が紹介されました。

ヌーラボ様は「Backlog」「Cacoo」など複数の SaaS プロダクトを 20 年以上にわたって提供されており、35 以上の AWS アカウント、300 以上のホスト、1,500 以上のコンテナ、50 以上のサービスからなる大規模かつ複雑なシステム環境を運用されています。
サービス規模の拡大に伴ってインフラ構成が複雑化し、インシデント調査の属人化や調査時間の長期化が課題となっていました。
こうした背景のもと、ヌーラボ様では「AI との協業によって持続的な信頼性向上を実現する」ことを目指し、「Bits AI SRE」を検証されました。

障害対応における Bits AI SRE の効果事例
ヌーラボ様における「Bits AI SRE」検証効果の具体例として、深夜帯に発生した DDoS インシデントへの対応事例が紹介されました。
午前3時50分 に調査対応が必要となった場面において「Bits AI SRE」は約 4 分で結論に到達しました。 その過程では 1 分あたり 170 万件(1.7M)に及ぶ大量のログを対象に、正確な調査結果と傾向分析が自動的に出力されていました。


二橋様は「Bits AI SRE」の調査結果を踏まえつつも、並行して実際に通常の調査手順に従って「Bits AI SRE」が提示した調査結果が正しいかを確認したところ、結論が正しいことの確認が取れたとのことです。
調査の過程で「Bits AI SRE」は、適切なクエリの実行や既存ダッシュボードの活用を自律的に行い、複数の仮説を提示することで通常であれば時間を要する分析を短時間で完了させていました。

また、Datadog 角田から「アラートの通知に調査に必要なダッシュボードのリンクを含めるなど、「Bits AI SRE」のためにチューニングを行なっていたか」との質問がされると、 二橋様は「このケースではチューニングは行なっておらず、tag(タグ)の情報を元にAI エージェントが自律的に適切なログやダッシュボードの調査を行なった」との回答をされました。
日常のアラート調査へのBits AI SREの応用
ヌーラボ様では、オンコール対応のアラート対応に限らず、デプロイ失敗、サービス影響のないエラー、スロークエリなど、60 種類以上のアラート調査に「Bits AI SRE」を有効化して効果検証を実施いただきました。
通常これらの調査には平均 30 分程度を要し、複数人で対応が必要となるケースもありましたが、「ほぼすべてのケースで「Bits AI SRE」は結論を導き出すことができ、独自のコンテキストが必要なものは追加情報(自然言語 / 学習 / Notebook等)が必要となる」との検証結果を共有いただきました。

Bits AI SRE と Slack 上で対話しながら活用
二橋様からはさらに「Bits AI SRE」の有用な点として、Slackとの連携機能により、Slack上で「Bits AI SRE」を呼び出し、今までの調査プロセスに近い形で自然言語で「Bits AI SRE」と対話しながら調査依頼ができる点を挙げていただきました。 専門知識を持たないメンバーでも気軽に利用できるため、チーム全体での活用が進みやすいと述べています。
Datadog 角田からも「この点は他のお客様からも評価いただくことが多い点だ」と共有されました。

キンドリル様による Bits AI SRE の組織的な効果への示唆
最後に、キンドリル 竹屋様からのコメントが紹介されました。
「Bits AI SRE は単なるインシデント対応時間の短縮に留まらず、エンジニア組織全体の底上げにも寄与する画期的な機能だと確信しています。 経験の浅いメンバーも含め、すべてのエンジニアがインシデント発生時に価値ある貢献ができるようになる点に大きな可能性を感じます。」
このフィードバックから、「Bits AI SRE」が単発の対応支援にとどまらず、ナレッジ共有や人材育成のプラットフォームとしても機能する可能性が示唆されました。

Q&A
Q&Aでは、ヌーラボ 二橋様に「Bits AI SRE」に関して3つ観点で質問を行い、以下の回答を頂きました。
「Bits AI SRE」に対するさらなる期待
「Bits AI SRE」はチューニングなしでも十分な効果を発揮しますが、将来的にはより少ない労力でより大きな成果を実現できるようになることを期待しています。 具体的には「Bits AI SRE」は調査のトリガーとして、事前にモニターを設定しておく必要があり、より深い洞察を得るためにはそのモニターにコンテキストを含める必要があります。将来的には異常を自律的に認識し、Datadog上のあらゆる情報に基づいてコンテキストを活用できるようになることを期待しています。
「Bits AI SRE」とMCP、他製品比較
「Bits AI SRE」はDatadogの持つ多様で高品質のデータに基づく学習とチューニングが行われており、網羅的で深みのある仮説検証を実施することを実感しています。 また、Datadogの高品質のデータ利用、機能連携、そして豊かな表現力を兼ね備えており、他では代替できない品質であることを確信しています。 一方で、MCPはアラートとして扱わない個別の調査、日々の開発業務、自然言語によるDatadogの操作といった幅広い用途に柔軟に活用できると思います。 他製品との比較として、まずDatadogは調査に関する多様で高品質なデータと優れたUIを持っています。 次に構成の観点でマルチアカウントやクラウドに対する横断調査の優位性があります。 そして、アラート調査に関する既存業務との統合を考慮すると、「Bits AI SRE」が非常に優位な位置づけであると判断しています。
「Bits AI SRE」のコスト
「Bits AI SRE」により、アラート調査プロセスをシステム化して自律修復や改善サイクルを回せる世界が実現できること考えると、十分に価値があると考えます。 そして、人件費の観点で24時間365日オンコール対応をしてくれることや、機会損失の観点で自社サービスや自社サイトなどのサービスダウンが利益に直結することを考えると、「Bits AI SRE」の投資対効果が分かると思います。

おわりに
Datadog Live Tokyo 2025 の Fireside Chat では、Datadogが提供するAI エージェント「Bits AI SRE」が、国内の様々な業界でどのような効果を発揮しているかが紹介されました。
ある銀行業のお客様では、数時間を要したインシデントの原因調査が 5 分以内に完了し、ヌーラボ様では、大規模・複雑なシステム環境における深夜のインシデントや、約60種類の日常的なアラート対応を迅速化できる検証を実施いただきました。 このように、本セッションでは「Bits AI SRE」は、AI Agent による自律的な調査を通じて、インシデント対応の品質向上と組織全体の底上げに寄与する可能性を秘めたソリューションであることが、複数の国内企業様の事例を通じて紹介されました。
改めまして、本イベントに登壇いただいたヌーラボ 二橋様、事例共有にご協力いただいたキンドリル 竹屋様、その他事例をご共有いただいた皆様に感謝申し上げます。 今後も実際の活用事例を通じてどのような価値提供ができるか、様々なイベントを通じてご案内予定です。






