my TOKYOGAS のサービスインフラをクラウド移行 フロントエンドをリプレース 東京ガスが提供する個人向けWeb会員サービス「my TOKYOGAS」は、2003年4月にガス料金のWeb照会サービスとしてスタートして以来、リニューアルを重ねながら進化を遂げてきた。現在はガスや電気の使用量や請求額の確認だけに留まらず、請求情報のダウンロード、料金のグラフ表示、利用によって貯まるポイントの確認などさまざまな機能を装備している。
2023年11月にはmy TOKYOGASのインフラ基盤をクラウドサービスのMicrosoft Azureに移行してリニューアルを図った。その背景には、2024年10月末で紙の検針票がペーパーレス化・有料化されることにある。リビング戦略部 デジタルプロダクト推進グループの杉山祐介氏は「検針票のペーパーレス化により、my TOKYOGASがお客様との唯一といっていい接点になります。しかし、従来のサービスはシステムの安定性に課題があり、満足のいくお客様体験が提供できているとはいえませんでした。ガスや電力の小売自由化で競争が激化する中、デジタル接点の強化は急務でした」と語る。
my TOKYOGASのフロントエンドは2022年4月に正式に発足した東京ガスの内製開発チームが担当し、バックエンドは東京ガスグループのIT中核企業である東京ガスiネット株式会社が担当することになった。
監視・運用ツールはインフラ基盤の移行に併せて再考し、Datadogを採用した。採用の理由は社内での利用実績、ガートナーのレポートでの評価、UI/UXの使いやすさなどにあった。東京ガスiネット インフラスペシャリスト部 my TOKYOGASユニットの三橋伸也氏は「東京ガスグループ内の他プロジェクトでDatadogを使った実績があり、社内にノウハウがありました。加えて、東京ガスグループでのクラウドサービス使用におけるデータ保護の観点で、Datadogが導入時点で唯一、国内のデータセンターでサービスを開設する情報が入ってきたことで採用を決めました」と振り返る。
写真左側 : 三橋 伸也 氏、真ん中 : 青木 翔平 氏、右側 : 杉山 祐介 氏 フロントエンドからバックエンド、基幹システムまで シームレスな監視と障害対応が実現
東京ガスはDatadogを2023年3月から6月にかけて導入し、同年11月のリニューアル以降はフロントエンドとバックエンドのエンジニアおよびビジネス部門の担当者の約60名が利用している。
利用サービスは、フロントエンド側がログ管理、UX監視(RUM)、モニターを中心に活用中だ。リビング戦略部 デジタルプロダクト推進グループの青木翔平氏は「ログ管理はアプリエンジニアが障害発生時にエラーログから原因を特定するために使用し、RUMはお客様側で動作エラーが発生した際にWebブラウザーの遷移を確認する際に活用しています。モニターは障害発生時のエラー通知での利用が中心です。ダッシュボードは開発時の負荷テストでアプリエンジニアがAzureのリソースを確認する時などに活用しています。ビジネス担当者はダッシュボードで日々のmy TOKYOGASの利用状況を確認しながら、障害やスパイクアクセスなどに備えています」と語ります。
バックエンドについては、インフラ監視、ログ管理に加えて、アプリケーション監視(APM)、DB監視(DBM)、カスタムメトリクスを活用している。
「既存インフラをリフトしたバックエンド側は、死活監視、ポート監視、ログ監視といった監視が中心です。APMが使えるようになったことで、APサーバーの内部的な処理の遅延が数値として把握できるようになりました。さらにAPMを使うことで、フロントエンドとバックエンドだけでなく、バックエンドと基幹システムのやり取りにおけるレイテンシーやエラーレートまで見えるようになり、リクエストに対するエラーを特定することが可能になりました」(三橋氏)
Datadogの導入により、インシデント発生時における原因調査から解決までの工数削減が実現した。障害検知率は従来から5~10倍向上し、結果として根本原因の解決率が向上している。インシデント発生時における原因調査から解決までの改善時間は約30%削減された。
「以前と比べて、障害発生の検知から原因究明の時間が短縮されました。インフラ・アプリを通して1つのツール上でリクエスト単位で処理が可視化されどこに影響しているかを知ることができるので、安心感が増しています」(三橋氏)
Datadogの使い勝手については、ダッシュボードの作りやすさと、検索のしやすさを評価する。
「Datadogはログのフィルタリングが簡単なので、SRE系エンジニアだけでなく、アプリケーション系エンジニアやビジネスメンバーでもすぐ使いこなせるようになりました。ダッシュボードも初期に作ったサンプルをベースに、エンジニアが各自で見たいものを作りながら活用を拡大しています」(青木氏)
Datadogの営業担当、カスタマーサクセスマネージャー、エンジニアによるサポート体制も評価し、必要な機能が効果的に利用できることに満足している。
「導入するまでがゴールではなく、システム稼働後の初期にモダンな監視方法に関する知見を教えていただいたことが印象的で、従来の監視方法を見直し改善するきっかけになりました。Datadogの機能についても、より効果的な機能の利用方法やコスト面も含めてアドバイスをいただける点で助かっています」(三橋氏)
今後についてはアラート検知の仕組みとしてプッシュ通知のオンコール(On-Call)の活用し、アクティブなアクションにつなげる考えだ。また、既存のバックエンドの代替として、2024年11月に一部の機能をリリースしたKubernetesによるマイクロサービスプラットフォームにおいてもDatadogの活用を検討している。
「今後、内製開発の領域をフロントエンドからバックエンドまで拡大し、よりクラウドネイティブなアーキテクチャに進化させていきます。コンテナのオブザーバビリティは難しいところもありますので、Datadogによる継続的な支援をお願いします」(杉山氏)
Datadogはログのフィルタリングが簡単なので、プラットフォー ム系エンジニアだけでなく、アプリケーション系エンジニアやビ ジネスメンバーでもすぐ使いこなせるようになりました
青木 翔平 氏 東京ガス株式会社 リビング戦略部 デジタルプロダクト推進グループ Platform Team Lead(2025年4月時点 )
以前と比べて、障害発生の検知から原因究明までの時間が大幅に 短縮されました
三橋 伸也 氏 東京ガスiネット株式会社 インフラスペシャリスト部 myTOKYOGASユニット