株式会社ミスミグループ本社 | Datadog
CASE STUDY

複雑化するシステム構成に対し、システム全体の可観測性を高めるDatadogを採用

株式会社ミスミグループ本社

FA製造装置用部品や、金型用部品、自動化関連間接材を製造・販売する「メーカー事業」と、他社製品も含めた自動化関連関節材から消耗品まで幅広い商品群を販売する「流通事業」を併せ持つユニークな業態。グローバル33万社以上の顧客に対して、3,000万点超の商品を提供している。


主な成果

統合監視の実現

インフラ、ログ、APM等、統一的なプラットフォームで監視することが可能となった。マイクロサービスの運用基盤であるAWSと、SAP S/4HANAの運用基盤であるGoogle Cloudのマルチクラウド対応も実現した。

システム開発時の性能テストで活用

アプリケーション開発のメンバーが、開発途中でDatadogのAPMをモニタリングしながらボトルネックを発見し、性能改善しながら開発を進めたり、監視機能を用いてシステム間連携のエラーを発見しながら改善をしたりする開発体制が確立された。

課題

メインフレームの基幹システムをオープン化してAWSに移行したが、新しいビジネスモデルに対応するためにはアーキテクチャの全面刷新が必要だった。既存環境は監視基盤、ログ管理、ダッシュボード、ログ分析などで異なるツールを使っており、マイクロサービスやマルチクラウドの運用には限界があった。


なぜDatadogなのか?

運用監視系機能がオールインワンで提供され、問題の発生確認から原因調査までの時間短縮が期待できることが一番の決め手。その他、システムを横断的に導入した際にもスケールが可能になることや、パッケージ/サービスの稼働状況の監視が容易なこと、マイクロサービスの運用基盤であるAWSと、SAP S/4HANAの運用基盤であるGoogle Cloudのマルチクラウドをサポートすることも採用の理由となった。


基幹システムを最新技術で全面刷新
事業成長の足かせとなった古い技術思想から脱却

オートメーションの現場で必要とされる機械部品、工具、消耗品などを製造、販売するミスミグループ本社は、1963年の設立以来、60年にわたって世界の製造事業者を支えている。受発注、在庫管理、会計管理など商品の安定供給を支える基幹システムを1989年に構築し、メインフレーム上で運用してきた。その後、ビジネスはグローバルへ拡大、売上高が3,000億円を超えた近年の事業規模に旧時代の思想と設計は合わず、デジタルを活用したビジネスモデル変革の足かせになっていた。2020年には基幹システムをオープン化し、プラットフォームにアマゾン ウェブ サービス(AWS)を採用。このオープン化/クラウド化を通してブラックボックス化していた旧時代のシステムを紐解いた。そしてさらに基幹システムを再構築する「NEWTONプロジェクト」を立ち上げ、新アーキテクチャで全面刷新する決断を下した。

新アーキテクチャは、トップマネジメントのリーダーシップにより新しい技術を積極的に導入し、ミスミの技術水準を一足飛びに高める方針とした。変化に柔軟に対応することを考慮して、主要機能をマイクロサービス化して疎結合化し、取引情報の管理・統制にはSAP S/4HANAを採用しGoogle Cloud上に構築する。そうした新技術の1つが監視運用の強化だ。ミスミの石原昌尚氏は「これまで監視基盤はZabbixを使用し、ダッシュボードやログ分析はシステム毎に異なるツールを利用していました。そのため、システム間やアプリ・インフラにまたがる障害調査においては、チーム間での連携に時間がかかる状況でした。それがマイクロサービス化して構成要素が増えると、システム間の連携が複雑化し、既存の仕組みでは対応できなくなる恐れがありました。そこで、インフラレイヤーとアプリケーションレイヤーの双方の可観測性を高める横断的な監視運用ツールをシステム共通で導入することを決断しました」と振り返る。

複雑化するシステム構成に対し、システム全体の可観測性を高めるDatadogを採用

新アーキテクチャに見合った監視運用ツールを検討した同社は、複数の候補の中からDatadogを採用。2020年4月にPoC(Proof of Concept)を実施した後、まずは台湾の現地法人で2022年8月に先行稼働した新基幹システムの監視運用ツールとして利用を開始した。NEWTONプロジェクトでは、インフラレイヤーに新たな技術を導入しながら、アプリケーションレイヤーまでサービス展開していた。そのため、既存で運用しているインフラの監視機能を十分に担保しつつ、APMやログ、ダッシュボードなどアプリケーションへと段階的に範囲を広げられることが必要だった。

「Datadog選定の決め手は、インフラ・アプリ横断の監視機能がオールインワンで提供されることにありました。また、Datadogは類似する他社のサービスと比べて歴史があり、インフラ監視に一日の長がありました。既存で運用しているインフラの監視機能を十分に担保しつつ、段階的にアプリ領域へ範囲を広げられるDatadogの採用はベストな選択でした」

株式会社ミスミグループ本社
NEWTON基幹開発推進室 セクションリーダー
石原 昌尚 氏

想定以上の大規模システム運用をDatadogで克服

NEWTONプロジェクトは現在も進行中で、先行稼働した台湾法人に続き、2023年4月には第2の海外現地法人でも本稼働を開始した。その後も、必要なマイクロサービスの追加や各国の法要件への対応を進め、2024年度までにアメリカ、欧州、中国などの現地法人向けや日本国内向けの基幹システムをNEWTONに移行し、監視運用ツールとしてDatadogを利用する予定だ。現時点では、Dat adogは台湾の現地法人のみでの利用だが、2023年3月時点で監視ホストは670台、ログは1億6,500万件、APMで監視するアプリケーションは250個に達している。

Datadogの導入により、当初から目的としていたインフラとアプリケーションの監視の共通化と、システムを横断した監視が実現した。石原氏は「システム間の連携は想像以上に増えていますが、それぞれのつながりが可視化されているため、ボトルネックや障害発生箇所が見つけやすくなりました。

Datadogを導入していなければ、システム運用は破綻していたかもしれません。現在、Datadogのテクニカルアカウントマネージャー(TAM)にサポートを依頼し、Dat adogの効率的な使い方や可観測性に対するモダンな考え方などについて定期的にレクチャーを受けています。製品を通して運用監視の新たな思想が学べるところにもメリットを感じています」と語る。

Datadogで開発効率も向上システム単体やUXから性能改善

Datadogを監視運用ツールとしてだけでなく、システム開発時の性能テストで活用している点も同社の特徴だ。一般的なアプリケーション開発では、性能テストを実施して原因を確認し、そこから性能改善に進んでいく。

同社の場合はアプリケーションチームが開発途中にDatadogのAPMを活用して性能のボトルネックを発見し、作り込みの段階で性能改善を実行している。NEWTON基幹開発推進室セクションリーダーの蔡 旭氏は「単体性能、結合性能、総合性能と段階を踏むことで、早い段階から性能のボトルネックを発見・解消しました。Dat adogは、一定期間の負荷状況も表示できるため、システムの安定性の確認にも効果的です」と語る。

今後は、監視運用と性能テストの2つの用途において、Datadogの活用レベルを高めながら、IT部門の多くの技術者が使いこなせるように横展開していく考えだ。そして、NEWTONプロジェクトだけでなく、ミスミグループ本社全体のシステム運用や開発にもDatadogの活用を拡大する青写真を描いている。同社では現在、ECサイトのフロントエンドの開発や運用を中心に内製化が進んでおり、Datadogのモニタリング機能などに期待を寄せている。

「画面表示のLCP(Largest Contentful Paint)、アプリケーションのAPM(Application Performance Monitoring)、インフラの負荷状況などを紐づけて確認できるDatadogは、性能テストのツールとしてもベストな製品です。今後もアプリケーション開発の領域で積極的に活用していきます」

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NEWTON基幹開発推進室 セクションリーダー
蔡 旭 氏

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